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RECRUIT JOURNAL

マネジメントは学べる。差がつくのはその手前にある ― 訪問看護で管理者に求める3つの資質

「管理者に向いている人」と聞いて、多くの人はシフト調整が得意な人、数字に強い人、部下の評価を的確につけられる人をイメージするかもしれません。もちろんそれらは大切な能力です。しかし訪問看護という仕事の現場に立つと、少し違う […]

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「管理者に向いている人」と聞いて、多くの人はシフト調整が得意な人、数字に強い人、部下の評価を的確につけられる人をイメージするかもしれません。もちろんそれらは大切な能力です。しかし訪問看護という仕事の現場に立つと、少し違う景色が見えてきます。訪問看護の管理者に本当に求められるものは何か。私たち株式会社ワードプレス(Footage訪問看護ステーション各務原)が日々の実践の中で見えてきたことを、今回から始まる連載の第1回としてお伝えします。

単独訪問という現場で、管理者に問われるもの

訪問看護という仕事は、病院やクリニックでの看護とは働き方の構造が大きく異なります。多くの場面でスタッフは一人で利用者のご自宅に向かい、その場で状態を見極め、判断し、対応します。同僚がすぐ隣にいて相談できる病棟とは違い、訪問先では基本的に「自分ひとり」で向き合う時間が長くなります。

Footageで働くスタッフは30代前半を中心とした世代です。子育てと両立しながら働く人も多く、看護師・セラピストとしての経験を重ねている途上にあります。専門職として伸び盛りの時期と、生活の中での役割の両方を抱えながら、単独訪問という緊張感のある働き方に向き合っている——それが私たちの現場の実像です。

こうした環境で管理者に求められるのは、単に「マネジメントが上手なこと」だけではありません。むしろ、なぜそう言えるのかを、順を追って考えてみたいと思います。

マネジメントは学べる。でも「実務能力」は、体系やツールからは受け取れない

まず前提として押さえておきたいことがあります。管理会計の考え方、シフト作成のロジック、スタッフ評価の枠組み、1on1の進め方——こうしたマネジメントの「知識」や「型」は、この十数年で相当に体系化が進みました。書籍やフレームワークとして広く共有され、学べば誰でも一定水準まで到達できる領域になっています。近年はAIやツールもその実践を後押ししてくれます。私たちの事業所でも、シフト作成や情報共有、業務の可視化といった場面でAI活用を含む補助ツールを取り入れており、「知識を得ること」の入口は、以前よりずっと下がりました。

ただ、ここで区別しておきたいことがあります。学べるのは、あくまで「知識」や「型」までだということです。実際に現場を回し、判断し、人を動かす力——私たちはこれを「実務能力」と呼びますが、これは体系や道具から受け取れるものではありません。自分の手で実践を積み重ねることでしか育たない、質の伴った力です。

なお、訪問看護ステーションの管理者は、法律上、保健師又は看護師である常勤者であり、かつ「適切な訪問看護を行うために必要な知識及び技能を有する者」であることが定められています。これは土俵に立つための条件です。その先で、実際に現場をどう率いていくかを分けるもの——それが、これからお話しする「実務能力」という土台です。

管理者の土台 ― 2つの実務能力

私たちは、管理者にとっていちばん大切なのは、この「実務能力」という土台だと考えています。そしてこの土台は、性質の異なる2つの実務能力から成り立っています。

① 訪問看護の現場の実務能力

ひとつは、訪問看護そのものの現場力です。自分自身が訪問の現場で何を見て、何を判断し、なぜその対応を選んだのかを、自分の言葉で語れること。私たちのキャリアラダーでは、実践能力の到達点を「単独実践ができ、それを自分の言葉で表現・調整できる」段階として位置づけています。

なぜこれが管理者に効くのか。単独訪問という構造の中で働くスタッフは、判断に迷ったとき、不安を抱えたとき、頼れる相手が近くにいません。そのとき管理者が「訪問の質を自分の言葉で語れる人」であれば、スタッフは「この人はわかって支えてくれている」と感じることができます。逆に、現場の解像度を欠いたまま指示や評価だけを行う管理者では、単独訪問で孤立しがちなスタッフを本当の意味で支えることはできません。

② マネジメントの実務能力

もうひとつは、マネジメントの実務能力です。ここで注意したいのは、マネジメントの「知識・型を知っていること」や「ツールを使えること」と、「実際に現場を回して意思決定できること」は別物だということです。シフトの考え方を知っていることと、限られた人員の中で実際に一か月のシフトを組み切れることは違います。評価の枠組みを知っていることと、目の前のスタッフに納得感のあるフィードバックを返せることも違います。この「実際にやり切る力」もまた、自分でやってみて、試行錯誤を重ねることでしか積み上がっていきません。

この2つに共通すること ― 効くのは「年数」ではなく「積み重ね」

2つの実務能力に共通するのは、どちらも体系やツールはあくまで補助であり、自分で実践を積み重ねることでしか育たない、という点です。ここで誤解のないようお伝えしたいのは、これは「経験年数が長ければよい」という話ではないということです。大切なのは、年数の長さではなく、一つひとつの実践をどれだけ解像度高く積み上げ、そしてその積み重ねを続けられるかという質の問題です。人材として本当に問われるのは、この「積み重ね続けられるか」だと私たちは考えています。

だからこそ私たちは、経験を「正しく積む」ための仕組みを大切にしています。キャリアラダーをはじめとする育成の設計は、経験年数に頼らず、一人ひとりが実践の質を段階的に高めていけるようにするためのものです。

どちらが欠けても、事業所は長くは続かない

この2つの実務能力は、どちらか一方だけでは足りません。そしてどちらが欠けても、長い目で見れば事業所の運営は行き詰まっていく——私たちはそう考えています。

とりわけ注意したいのが、①現場の実務能力が育っていない場合です。マネジメントの型やツールがどれだけ整っていても、現場そのものの実務能力を欠いた管理者では、マネジメント以外の——つまり現場で日々生まれる課題を、解消することができません。利用者の状態変化への気づき、多職種との連携の詰まり、ケアの質のばらつき。こうした課題は、解消されないまま現場に滞留していきます。

滞留した課題は、静かに、しかし確実に積み上がります。やがてそれは利用者へのケアの質に、そしてスタッフの負担に跳ね返り、事業所そのものが立ち行かなくなっていきます。マネジメントが上手いだけでは、現場は守れない。実務能力という土台があってはじめて、事業所は続いていくのだと私たちは考えています。

積んだ実務力を「届ける」力 ― 突破力と愛嬌

ただし、実務能力は積み上げるだけでは、まだ事業所の力になりきりません。その力が、社内のスタッフに、多職種の関係者に、そして利用者やご家族に「届いて」はじめて、現場は動きます。積んだ実務力を広く届けるために欠かせないのが、次の2つの力です。これらもまた、経験年数ではなく、訓練によって育てていける力です。

コミュニケーションの突破力 ― 閉じた扉をそっと開ける技術

まずは、コミュニケーションの突破力です。誤解されやすい言葉ですが、これは押しの強さや、体育会系的な勢いで物事を進める力ではありません。むしろその逆で、多職種の関係者、利用者やそのご家族、そして現場のスタッフとの間に生まれる「停滞」や「閉じてしまった扉」を、丁寧に、繊細に開いていく技術です。

私たちはこれを大切な価値観として掲げています。「コトバで、気づきの扉を開く。」——これは私たちのVALUEのひとつです。会話が噛み合わない、意見が対立している、あるいは誰かが心を閉ざしてしまっている。そうした場面で、力で押し切るのではなく、ことばの選び方や伝え方を工夫することで、相手が自ら気づき、扉を開けるきっかけを作る。これは訓練と経験によって磨かれる、れっきとした技術です。

管理者にとってこの力が重要なのは、単独訪問という構造上、スタッフ同士の接点が薄くなりがちだからです。多職種連携の調整、ご家族との難しい対話、スタッフ間の行き違いの解消——これらすべての場面で、ことばによって停滞を動かせる管理者がいることは、現場全体の安心感に直結します。私たちは「ことばは、もう一本の手だ。」という考え方を大切にしています。ことばで押し、ことばで抱きしめる。その両方の姿勢が、管理者に求められるコミュニケーションの本質だと考えています。

愛嬌 ― ことばを深く届けるための、訓練可能な技術

もうひとつは、愛嬌です。この言葉を聞いて、生まれ持った性格や人当たりの良さ、あるいは見た目の印象を思い浮かべる方もいるかもしれません。しかし私たちが大切にしている愛嬌とは、そうしたものではありません。愛嬌とは、ことばを届けるための「器」であり、訓練によって磨くことができるコミュニケーションの技術です。採用や評価の場面で、生来の性格や外見を選別する意図は一切ありません。

同じ内容の言葉であっても、それがどう届けられるかによって、相手の受け取り方は大きく変わります。私たちはこれを「良い勘違いを生む力」と表現しています。愛嬌のある伝え方は、相手の自己効力感を高め、受け取られ方を前向きなものに変え、場の感情を転換させる力を持っています。「同じ言葉も、愛嬌があれば深く届く。安心と前向きさを生む。」——これは私たちが大切にしている考え方のひとつです。

管理者にとってこの力がなぜ重要か。どれほど正しい指示や的確なフィードバックであっても、伝え方次第でスタッフの受け取り方はまったく違うものになります。子育てなどと両立しながら働くスタッフも多いなかで、日々の業務連絡や評価のひとことが、負担にも支えにもなり得ます。愛嬌という技術を備えた管理者の存在は、現場に安心と前向きな空気を生み出す、目に見えにくいけれど確かな力です。

土台と、それを届ける力がそろって、事業所は続く

ここまでを整理します。マネジメントの知識や型は、体系化とツールの力で学べる時代になりました。しかしその先で管理者を支えるのは、自分の手で積み重ねるほかない「2つの実務能力」という土台と、それを社内外へ届ける「突破力」と「愛嬌」です。

土台となる実務能力が欠ければ、現場の課題が滞留し、事業所は長くは続きません。届ける力が欠ければ、せっかくの実務力も、組織や利用者に十分には活かされません。そしてこれらはどれも、経験年数の長さではなく、実践と訓練を正しく積み重ねることで育っていく力です。だからこそ私たちは、役職という肩書きだけでなく、一人ひとりが現場で果たす「役割」に光を当て、こうした力を育てていける組織のかたちを目指しています。

おわりに ― 私たちが管理者・役職者に求めるもの

私たち株式会社ワードプレス、Footage訪問看護ステーション各務原が管理者・役職者に求めているのは、マネジメントの型を知っていることだけではありません。訪問看護の現場を自分の言葉で語れる実務能力、現場を実際に回すマネジメントの実務能力、そしてその力を社内外へ届けるコミュニケーションの突破力と愛嬌。これらを、経験年数ではなく実践の積み重ねとして育てていける人と、共に現場を支えていきたいと考えています。

そして私たちは、その積み重ねを一人に背負わせません。キャリアラダーや仕組みを通じて、経験を正しく積んでいけるよう支えていきます。管理者・役職を目指している方、そして今Footageで働いているスタッフ・リーダー候補の皆さんへ。これらの力は、今日から正しく積み重ねていけるものです。

次回の連載では、この土台のうち「訪問看護の現場の実務能力」を、キャリアラダーの考え方と合わせてさらに詳しく掘り下げていきます。

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